2011年9月29日木曜日

もうひとつの世界システム論

 米ソの冷戦時代は日米同盟というある種の保険は日本にとってありがたいものだったかも知れない。
つまりソ連の脅威から米国が保護してやるから、それに見合う費用は出して欲しいということだ。
日本に限らず米国と同盟関係にある国々は否応なく米国の保険に入らざるをえなかった。

 ソ連が崩壊して東西対立・冷戦はなくなった。そして米国は史上最大の世界一の軍事大国になった。
ならば米国は強大な軍事力を維持するためにずっと保険が必要だがソ連という脅威がなくなれば保険料に対して
同盟国は疑問を持ってくるだろう。タイミング良く対テロ戦争が始まり、イラク戦争、アフガン戦争などで
世界にはまだまだ米国の保険が必要だと言う、しかも保険料はますます高くなる。

 特に日本が拠出してきた保険料は日本以外の米国の同盟国の合計よりも多いほどの世界ダントツであったし、
それは今も続いている。これは世界的な常識で言えば保険ではなく「ゆすり」と言えるほどである。
以前に米国の要人が沖縄の人に「ゆすりの名人」と言ったことがあったが、米国の場合は規模が違う。

 冷戦時代と違って、すでにある脅威に対する保険ではなく、米国が作り出した脅威なのである。
中国の脅威も保険の対象になっているのだろうが、米国の軍事力に比べて中国の軍事力なんて数分の一程度、
しかも中国の脅威を言うなら軍事的な脅威よりも遙かに経済的な脅威の方が現実的だ。
軍事的にありもしない脅威ならゆすりどころか振り込め詐欺に騙されているようなもの。

 冷戦時代の米ソのように米中が軍事的に対立しているとは言えないし、
中国囲い込みが機能しているわけでもなくむしろ中国と世界各国との経済的な相互依存関係は深くなる一方である。
変わりゆく国際経済関係に不感症で中国の軍事的な脅威を唱えるしか能がないなら、
今後の日本は国際的に孤立してゆくばかりである。

 国際情勢を冷静に見つめ日本がめざすべき方向を舵取りできる政治理念を持った有能な政治家が
日本にいるのだろうか。これまでの権力体制が反転してしまうほどの改革が必要とされるこの世界の変革期に
必要な政治家はこれまでの日本的な体質では絶対に出てこないし出てくると抹殺されてしまう。

 冷戦が終わってこれまで常識と思ってきたことはもはや非常識なのかも知れない。
世界における米国、中国、という大国の動きに関して何かを発言すると、
左翼だ、右翼だ、反米だ、反中だ、と言う人もいるかも知れないが、
そういう思考方法からは世界の今後の動きは全く理解できないことになるかも知れない。

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